糖尿病は、尿に糖(ブドウ糖)が出ると思われがちですが、尿から糖が出てくるのは、ある程度進行してからです。
初めは血糖値、つまり血液中のブドウ糖濃度が食事のあとだけ高い、食後の高血糖として現れます。尿に糖が出てないという理由で糖尿病ではないと安心するわけにはいかないのです。
私たちが取った食物は、胃で消化され、腸でさらに消化され、食物に含まれる栄養素が吸収されます。栄養素のうち炭水化物はブドウ糖にまで分解され小腸の上部から吸収されますが、吸収されたブドウ糖が、血液の中に入ると血糖値が上がります。そして血糖値が140mg/dlぐらいに上昇すると、インスリンというホルモンが分泌されます。インスリンは血糖、つまり血液中のブドウ糖を細胞の中に取り入れる働きを持っています。インスリンが適正に働いていれば、ブドウ糖は血液中に必要以上にとどまらず、日々の活動のエネルギー源として肝臓や筋肉などの細胞に取り込まれていきます。逆に、インスリンの量が十分でなかったり、働きが弱いと、血液中のブドウ糖がいつまでも残って、高血糖の状態になるのです。
ブドウ糖が血液内にだぶついていた状態である高血糖になると、ひどく疲れる、だるくてやる気が起きないなどの症状が出てきます。
しかし、高血糖で最もこわいのは、それによって引き起こされる副産物としての合併症です。
糖尿病のこわさは、糖化のこわさです。ブドウ糖は、たんぱく質と結合しやすい性質をもっているため、血液中のブドウ糖は、体のあちこちでたんぱく質と結合します。これを糖化といい、細胞のたんぱく質が糖化されると、細胞本来の働きを損ないます。
つまり、血液中にある必要以上のブドウ糖が、全身の臓器にさまざまなダメージをもたらすのです。ブドウ糖の影響によって、血管は細く弱くなります。目の毛細血管にこれが起こると網膜症から失明に至ったり、腎臓の毛細血管に起こると人工透析が必要な腎不全につながります。神経が冒されて神経障害を起こし、手足がピリピリとした痛みを感じることもあります。
こうしたトラブルは、血糖値が高くなってもすぐに生じるわけではありません。だからこそ、血糖値が高いと分かれば、それを下げる努力が大切なのです。
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